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分譲マンションで住宅宿泊事業を行う際の制限と注意点

  • fg-all
  • 6月11日
  • 読了時間: 5分

更新日:6月11日

住宅宿泊事業に関心が高まるなか、分譲マンションでの対応は厳格化

近年、住宅宿泊事業、いわゆる民泊に関する関心が高まり、副業や不動産活用の一環として検討する方が増えています。住宅宿泊事業法が施行されたことにより、以前より制度として整備されてはいるものの、特に分譲マンションにおいては、法律以外にも独自のルールや制限があることから注意が必要です。

東京都江東区にあるリーリエ行政書士事務所では、住宅宿泊事業の届出支援や法的アドバイスを提供していますが、とりわけ分譲マンションを所有する方からは「自分の部屋なのに民泊はできないのか」といったご相談が多く寄せられています。

このような疑問に対しては、法令上の要件に加えて、マンション固有の管理規約や組合運営の実態を正確に把握することが求められます。本記事では、分譲マンションにおける住宅宿泊事業の制限と実務的な注意点について、制度の背景と共に客観的に説明します。


分譲マンションにおける住宅宿泊事業の基本的な立場

分譲マンションは、区分所有建物と呼ばれる形態で、各住戸の所有者が独立した所有権を有しつつ、建物全体や共用部分の管理を共同で行うという性質を持っています。そのため、住宅宿泊事業を行おうとする際には、自己の専有部分だけでなく、建物全体の管理方針や規則にも従う必要があります。

住宅宿泊事業法では、分譲マンションを含む住宅において、一定の届出と基準を満たすことで事業を行うことが可能とされています。しかし、これはあくまでも国や自治体の制度上の話であり、実際に運営できるかどうかは、マンションの管理規約や管理組合の運用方針に大きく左右されます。


管理規約での禁止事項が事業の可否を左右する

住宅宿泊事業を行おうとする場合、最も重要なのがマンションの「管理規約」の内容です。多くの分譲マンションでは、住宅の用途を「専ら居住用に限る」と定めており、これに基づいて民泊のような一時利用を禁止しているケースが多く存在します。

管理規約には法的拘束力があり、区分所有者であってもその規定に従う義務があります。そのため、たとえ国や自治体に住宅宿泊事業の届出が受理されたとしても、マンション内での事業が許可されていなければ、管理組合や他の居住者との間でトラブルが発生する可能性があります。

さらに、マンションによっては管理規約に民泊禁止の明文規定がない場合でも、管理組合の決議により運用上禁止していることもあり、実質的に事業実施が困難となる場合があります。


管理組合との関係性が鍵になる

分譲マンション内で住宅宿泊事業を行う場合には、管理組合との良好な関係性と、事前の丁寧な確認が極めて重要です。管理組合は、共用部分の管理や居住環境の維持を目的とする自治的な組織であり、住民の意見が強く反映される場でもあります。

民泊に対する印象はマンションによって異なりますが、一般的には、不特定多数の宿泊者の出入りや騒音、ゴミ出しのルール違反などが問題視されやすく、管理組合が慎重な姿勢をとる傾向があります。こうした背景から、事業開始前に管理組合に相談し、必要に応じて合意形成を図ることが求められます。

なお、管理規約の変更には一定の手続きと住民の合意が必要であり、たとえ所有者が民泊事業に前向きであっても、全体の合意が得られない限り変更は難しいのが現実です。


専有部分であっても共用部分に依存する運用

分譲マンションにおいては、エントランス、廊下、エレベーター、ゴミ置き場など、建物の多くの部分が共用部分となっています。宿泊者がこれらの共用部分を日常的に使用することになるため、事実上、民泊の運営には全住民の生活環境への影響が避けられません。

専有部分の使用は基本的に所有者の自由に任されていますが、共用部分の利用に関しては管理規約や管理組合の定めに従う必要があります。そのため、共用部分での宿泊者の行動が周囲に与える影響が大きい場合、所有者としての自由は制限される可能性が高くなります。


行政への届出が通っても安心できない理由

住宅宿泊事業法に基づく届出は、都道府県または指定都市の窓口に対して行います。この届出が受理されれば、法令上は民泊の運営が可能になりますが、これはあくまで「法令上の手続きが完了した」ということを意味するにすぎません。

届出の際に、物件が集合住宅であるか、管理規約に制限があるかといった点が問われることはありますが、それを理由に届出が拒否されるケースは少数です。したがって、届出が通っていても、管理規約違反であれば民泊運営を継続することはできません。

実際に、届出後に住民からの反発があり、管理組合による規約変更を経て運営を中止したケースもあるため、届出が「免罪符」とはならないことに注意が必要です。


事業を行う前に確認すべきポイント

分譲マンションで住宅宿泊事業を検討している場合には、まずは管理規約の確認を行うことが出発点です。具体的には、用途制限に関する条文、民泊に関連する禁止事項、規約変更の履歴などを慎重に読み取る必要があります。

また、過去に他の住民が民泊を行った事例があるか、管理組合がどのような対応をしているかについても、実務上は重要な情報となります。物件をこれから購入する段階であれば、購入前に不動産会社に対して民泊の可否を確認することが、将来のトラブル回避につながります。


まとめ:分譲マンションにおける民泊は法令と管理規約の両面での確認が必要

分譲マンションで住宅宿泊事業を行う場合、建物の所有者であっても、その自由は必ずしも無制限ではありません。住宅宿泊事業法による制度整備が進んだ現在でも、マンション固有の管理規約や運用方針が大きな障壁となることがあります。

したがって、民泊を始める前には、管理規約の内容や管理組合の方針を十分に確認し、住民間の合意形成を意識することが必要です。管理組合との連携がうまくいかなければ、たとえ法令上は可能であっても、実務上は困難な運営を強いられることになります。

リーリエ行政書士事務所では、住宅宿泊事業の届出サポートに加えて、管理規約の読み解きやトラブル回避のための法的アドバイスも提供しています。分譲マンションでの民泊を検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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