債権回収とは?ビジネスで知っておきたい基本と実務対応
- fg-all
- 6月1日
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取引先に商品やサービスを提供したのに、期日になっても代金が支払われない――。こうした「債権回収の問題」は、フリーランスにも企業にも共通する大きなリスクです。本コラムでは、債権回収の基本や関係する法律、実務で使える対応策について解説します。
債権回収とは?
債権回収とは、契約や法律に基づいて有する「金銭などを受け取る権利(債権)」を、相手方に履行してもらうよう働きかける一連の行為を指します。
たとえば以下のような場面が該当します。
納品後に請求書を送ったが、支払期限を過ぎても入金がない
報酬支払いを何度も催促しても反応がない
分割払いが途中で滞っている
債権が長期間回収できないと、自社の資金繰りにも深刻な影響を与えるため、迅速かつ適切な対応が重要です。
債権回収に関係する法律
債権回収に関係する主な法律は以下のとおりです。
内容 | 関連する主な法律 |
契約違反に対する請求 | 民法(債務不履行:第415条) |
不法に債権を逃れようとする行為 | 民法(詐害行為取消権:第424条) |
支払督促など裁判手続き | 民事訴訟法、民事執行法 |
担保権を実行する場合 | 動産・不動産に応じて民法・商法・不動産登記法等 |
契約段階でしっかりと条件を明記し、証拠を残しておくことが、万が一のトラブル時にも強い味方になります。
債権回収のステップ
債権回収は段階的に対応するのが基本であり、以下のようなステップで進めるのが一般的です。
催促(メール・電話):まずは穏便な方法で連絡し、支払いを促します。
内容証明郵便の送付:法的トラブルへの備えとして、支払いの意思を正式に確認します。
支払督促や少額訴訟の利用:裁判所を通じて法的手段を講じることで、強制的に支払いを求めます。
判決確定後の強制執行:財産を差し押さえて回収を図る段階です。
相手との関係や金額に応じて、柔軟な対応が求められます。
債権回収における注意点と時効・トラブル事例
債権回収にあたっては、特に「時効」に注意が必要です。民法では、原則として債権は権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で時効により消滅すると定められています(民法166条)。
そのため、長期間放置した請求は法的に認められない可能性があり、早期対応が極めて重要です。たとえば、納品から5年以上が経過していて、かつ請求をしていなかった場合、報酬請求権は時効で消滅するリスクがあります。時効に関しては別ページで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
また、時効以外にも以下のような点にも注意が必要です。
違法な取り立ては禁止:威圧的・暴力的な手段は逆に訴えられる可能性があります(貸金業法等)
回収より関係維持を優先すべき場合もある:相手が今後の取引先であるなら、回収と関係維持のバランスが必要です
弁護士への相談:法的手段に踏み切る前に、専門家に相談することで無駄なトラブルを避けられる場合もあります
実務で特によく見られるトラブル例としては、以下のようなものがあります。
契約書が存在しない:口約束だけで業務が始まり、支払いの証明が困難になるケースは非常に多く見られます。
分割払いの途中で連絡が取れなくなる:一部支払いはあったが、残金が未回収になることも少なくありません。
担当者が退職し、対応がうやむやに:会社側が「そんな契約は知らない」と主張してくることがあります。
業務完了後に条件変更を求められた:納品後に「想定より品質が低い」と一方的に減額を申し出られ、最終的に支払いがなされなかったケースも。
契約書不備による請求棄却(実務上の典型事例):口頭契約のみで「業務委託報酬」の支払いを請求したが、契約内容や金額、業務範囲を裏付ける証拠が不十分とされ、請求が認められなかったケースも。
こうした失敗例を踏まえても、契約書や請求記録の整備、支払い状況の管理が不可欠です。
まとめ
債権回収は、ただ「お金を取り戻す」行為ではなく、法的手段を含めた冷静な対応と戦略が必要です。とくにフリーランスや中小企業にとっては、ひとつの債権が経営に大きな影響を与えることもあるため、契約段階からの備えが不可欠です。
「支払われて当然」ではなく、「支払ってもらえるよう準備しておく」という意識が、トラブルの予防とスムーズな回収のカギになります。
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